国分寺 精神科 心療内科 大学通り武蔵野催眠クリニック メンタルクリニック

今回は久しぶりのブログの更新ですが、学会参加のご報告です。昨年に続き、今年もコロナ禍で多くの学術大会もオンラインでの開催となっていますが、このたびは6月26日ー27日の2日間に渡って開催されました日本ブリーフサイコセラピー学会のオンライン大会に参加いたしました。2日目のご報告は次回に回すこととしまして、今日は1日目の目玉、基調講演の「未来を生き抜く力、見つけたい：日本で”最も”自殺の少ない町の調査から」についてお話いたします。

この講演は、情報・システム研究機構 統計数理研究所 医療健康データ科学研究センター/慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科にご所属の、岡 檀先生によるものです。日本は自殺問題についてまだまだ解決しなければならない点を多々抱えている先進国で、それでもこの10年間ほどは自殺率は減ってきていたのですが、今回のコロナ禍により、特に女性の自殺率が上昇したとも言われています。岡先生のご研究の素晴らしいのは、一口に自殺率といっても地域差があり、自殺率の最も少ない徳島県の海部町と自殺率の高い他の町を比較することによって、何が自殺を予防する要因になっているのかを見い出されたことです。岡先生によると、実は海部町では一見人と人との絆がゆるいように見えながら、町民同士が適度な距離を保ちながらお互いを見守るようなところがあり、個々の多様性を尊重し、精神疾患を含めて悩み事について互いに相談しやすく、他人を許せる土壌で、さりげなく立ち話できるような空間もあちこちに設けられているといいます。

人を心配する場合にはややもすればその人の心に入りすぎてしまって逆に相手の負担になってしまうこともありえますが、そうした押し付けがましさがなく、しかしいつでも必要な見守りは与えていてその人を大切にできているというのは本当に素晴らしいことだと、多くの参加者が感動した次第です。私も大きなヒントを頂戴し、今後の仕事に活かせるように心がけたいと思います。