» 家族療法・夫婦療法

家族療法、夫婦療法は、個人の患者様の治療を目的とするというのではなく、ご家族、ご夫婦の関係、相互作用を扱う治療です。
催眠療法よりもむしろご家族、ご夫婦の関係を相談の焦点にすることで治療が進みやすいというご相談のケースも時々に見受けられたため、当院においても以前より必要に応じて家族療法、夫婦療法を行ってまいりましたが、今回改めて家族療法、夫婦療法も行っているとご案内することにいたしました。
夫婦は家族の一形態ですので、以下まとめて、家族療法として話を進めさせていただきます。
家族療法とは
家族療法は、1950年代における米国での統合失調症の家族研究などが発端になり、1970年代の一般システム理論の流れが加わって誕生した経緯があります。
今日では、家族療法は「問題を持った家族を治療するための方法」という考え方はしない傾向にあります。特にシステムズ・アプローチという流派の家族療法の視点からは、家族というシステムの中で個々の成員の間の関係がぎくしゃくしているため、そのぎくしゃくした状況、相互関係を修正しようと試みます。ちなみにシステムというのは簡単に、「部分と部分が相互作用している全体」、あるいは「その相互作用のあり方(連鎖・パターン・ルール)」のこととお考えください。
たとえば、「息子さんが学校に行かないのでお母さんが行かせようと促し、お父さんは見て見ぬふりなのでお母さんはお父さんに怒りを覚えているが、お父さんは見て見ぬふりを続けている」という場合、まずは「学校に行かない」という息子さんの「問題」とされがちな状況ですね。ただ見方によっては、お母さんがあまりに厳しく登校を促すために息子さんはお母さんに従いたくないという状況も考えられます。ただそれも、お母さんがよい母親でありたいと強く願いすぎる故だったりするのかもしれません。またお母さんがあまりにお父さんに厳しく対応を迫るためにお父さんも委縮し、余計にどうしていいかわからなくなっており、お父さんが息子さんに厳しく言わないから不登校が続く、というような状況もあり得ます。さらには、お母さんが明らかにお父さんよりも強い力関係があり、息子さんの不登校の問題が間接的にお父さんとお母さんの夫婦関係を改善するための機会を与えている、などという見方もできないことはありません。つまり「子供」の不登校の問題のように見えても、問題が続くのは「家族の成員がそれぞれにその問題が解決されにくい形で関係し合っているから」と見ることができます。
この親子の場合にはたとえば、お母さんがお父さんにもう少し優しく協力を頼むようにする一方でお父さんには積極的に関わってもらう、という対処が解決の糸口になるかもしれません。あるいは、お母さんは息子さんが学校に行かなくても登校を促さずに見守る、という対処が有効かもしれません。こうした介入は、家族の誰かが悪いという視点には立たず、家族の間の関係を調整するための援助ということになりますね。
こんな風に息子さんの問題と見えるものをめぐってお母さん、お父さんとも無関係でないのは、家族システムが「部分と部分が相互作用している全体」として関わり合っているからです。またお母さんの方がお父さんより強い力関係というのは、暗黙の「相互作用のあり方(連鎖・パターン・ルール)」という側面にあたります。
家族療法の特徴
家族療法は、個人の患者様を対象にする心理療法とは違う以下の3点を強調しています。
- 生じている症状、問題を「個人」の問題ではなく「関係」の問題ととらえ直し、家族関係を変化させることで元々の症状や問題を消去したり、軽減したりすると考えます。つまり、多くの心理療法が個人の行動やパーソナリティ、内的心理に焦点を当てますが、家族療法ではとりわけ家族成員の間の関係性に着目し、アセスメントし、介入を考慮します。
- 家族の過去・現在・未来のいずれか、もしくはいくつかを扱います。現在のご家族の成員の間の関係を扱うばかりではなく、過去から現在に及ぶ歴史的な家族関係に視野を入れることが援助になる場合もあります。また、理想的な家族の未来像をイメージしていくことが解決に役立つこともあり得ます。
ただ、私(川嶋)の個人的な経験の多くはブリーフセラピー(ミルトン・エリクソンの催眠療法の流れから派生した心理療法の諸派で、家族療法の流派もあります)に基づいているため、当院では現在のご家族の中の関係に焦点を当てることが多くなろうかと思います。 - 家族は個人とコミュニティ(例えば学校、職場など)の間に存在する集団になるため、家族のコミュニティへの適応も考慮しています。たとえば、不登校のお子様のことでご相談をいただいた場合にご家族のことと同時に学校での人間関係あるいは学校と家族との関係などを扱うこともあり得ますし、元々はご夫婦の問題についてのご相談であっても職場の人間関係などに触れていくこともあり得ます。逆に、学校の中のいじめが問題と見られる不登校の場合にもご家族の協力をお願いしたりする場合もあります。
家族療法の適応
家族療法では家族の誰か1人の問題とみなす立場をとりませんが、一般には、下記のような問題でお困りのご家族の状況が家族療法の適応となります。家族療法を考慮される際には遠慮なくご相談ください。
- 子供・青年における適応
- 問題行動
不登校、家庭内暴力、ひきこもり、自傷行為、非行、薬物乱用、抜毛など - 精神疾患
境界性パーソナリティ症、摂食障害、強迫性障害、過換気症候群、外傷後ストレス障害、発達障害など - 心身症
アレルギー疾患、喘息、胃腸障害、肥満など
- 問題行動
- 成人における適応(夫婦療法を含む)
- 問題行動
児童虐待、家庭内暴力、性機能障害、浮気、帰宅拒否、ギャンブル依存など - 精神疾患
うつ病、不安障害、恐怖障害、外傷後ストレス障害、境界性パーソナリティ症、高齢者の精神障害など - 心身症
アレルギー疾患、胃腸障害、糖尿病、本態性高血圧、肥満など
- 問題行動
家族療法を行うに当たって
家族療法を行う曜日・時間・場所
当院の開院時間帯であれば、ご自身の都合で予約を取ることができます。曜日、時間などでご都合のつきにくい場合にも、まずはご相談ください。
自費診療についてのご説明
家族療法は、原則として1セッションを行うのに最低50分を要します。そのため保険診療の中では行えず、すべて自費診療となります。以下の時間と費用で設定させていただきますが、多くは50分で可能であり、50分内では扱いきれないと判断される場合には100分をお勧めする場合がございます。それらはご相談の上、柔軟に対応いたします。
50分 : 10,000円(消費税別)
100分 : 18,000円(消費税別)- 予約日の前日夕方4時までにお電話をいただけなかったキャンセルについてはキャンセル料をいただいておりますので、ご留意ください。
それでは、どうぞ気軽にご相談ください。
2026年6月5日
大学通り武蔵野催眠クリニック院長 川嶋新二拝
参考文献
- インスー・キム・バーグ(磯貝希久子監訳):家族支援ハンドブック―ソリューション・フォーカスト・アプローチ. 金剛出版, 1997.
- 東豊:リフレーミングの秘訣―東ゼミで学ぶ家族面接のエッセンス. 日本評論社, 2013.
- マーフィ.J.J., ダンカン B.L. (市川千秋ら監訳):学校で役立つブリーフセラピー. 金剛出版, 1999.
- 牧原浩監修, 東豊編:家族療法のヒント. 2006.
- 宮田敬一編:医療におけるブリーフセラピー. 金剛出版, 1999.
- 中村伸一:家族療法の視点. 金剛出版, 1997.
- 中村伸一:家族療法のいくつかの考え方. 家族社会学研究, 29 (1) : 38-48, 2017.
- 宋大光, 東豊, 黒沢幸子:もっと臨床がうまくなりたい―普通の精神科医がシステムズアプローチと解決志向ブリーフセラピーに学ぶ. 遠見書房, 2021.
- 田中究:心理支援のための臨床コラボレーション入門―システムズアプローチ、ナラティブ・セラピー、ブリーフセラピーの基礎. 遠見書房, 2021.
- 吉川悟, 東豊:システムズアプローチによる家族療法のすすめ方. ミネルヴァ書房, 2001.
- 遊佐安一郎:家族療法入門―システムズ・アプローチの理論と実際. 星和書店, 1984.

