日本精神神経学会第117回大会にオンデマンドで参加しました(4) ―斎藤正彦先生の「COVID19流行下の精神科病院連携」
2021年12月5日
今回は、令和3年9月19日―21日に開催された日本精神神経学の会第117回大会についてのご報告の第4弾です。斎藤正彦先生は日本最大の公立精神病院である松沢病院の前院長ですが、新型コロナウイルス感染症の蔓延下での東京の精神科病院が連携して患者を受け入れ、治療に当たった健闘ぶりについてのご講演の一部をお伝えできればと思います。
精神科の患者様は精神症状のために新型コロナウイルスに感染しているリスクを理解できず、治療や衛生管理に協力を得るのも難しいため、治療スタッフの対応は困難を極めます。それだけでなく、皆様もご存知かと思いますがコロナ感染者を受け入れるとなれば感染が他の患者様やスタッフに広がらぬよう十分に配慮する必要があり、結果として非常な人的労力を割かねばならないにもかかわらず、逆に病院全体の収入が減ってしまう状況にもなります。そのような中で、東京では精神科で入院を必要とする患者様を松沢病院、国立精神神経医療研究センター、そして民間のA病院が分担して引き受けてくださっているというのが現状です。
松沢病院は元々身体合併症をもつ患者様を引き受けていたために内科医もおられたことは強みではありましたが、感染症に慣れていないスタッフが多く、医療スタッフだけでなく清掃スタッフに至るまでに院内感染を起こさぬよう教育や管理を徹底した上で、外来患者を減らし、病棟の一部にコロナ専用病棟を作って対処することになりました。そのような体制で受け入れなければならない患者は松沢病院かかりつけのコロナ患者だけではなく、他の精神病院でコロナを発症し、クラスター感染を起こして複数の方の受け入れを要請されることもあります。元々精神病院ということもあって、受け入れの条件としてコロナの重症度は中等度以下の方に限るということがありましたが、途中から重症化しても内科の専門病院に受けてもらえぬこともあり、それでも患者様やご家族が専門病院への転院を強く希望されることもあり、また他の精神病院から転入院になった方は回復後には元の病院に戻ることが前提であったにもかかわらず、回復した時には元の病院の職員も感染して入院を受け入れられない状況になっていたりと、想像に余るご苦労をされてきたようです。この状況を病院間の連携で何とか乗り切ってこられているのですが、今後改善されるべき多々の行政システム上の問題の指摘もありました。私のような開業医はこのようなご苦労にはなかなか思い至りませんでしたが、関連スタッフの皆様に感謝するとともに、今後コロナ感染が収束し、行政上の問題も解決されていくことを願ってやみません。
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