自己免疫疾患に対する催眠療法〜リウマチ性関節炎、橋本甲状腺炎など
2019年6月1日
本来外界から体内に侵入しようとする細菌、ウイルス、真菌などに対して攻撃を加え、身体を守るという大切な役割を担っているのが免疫系なのですが、その免疫系が自身の身体の細胞を誤って外敵と認識し、攻撃してしまう病気を自己免疫疾患といいます。自己免疫疾患には、リウマチ性関節炎、全身性ループスエリテマトーデス、甲状腺機能亢進症、橋本甲状腺炎、多発性硬化症をはじめ、多くの疾患が含まれます。催眠療法はこうした自己免疫疾患を治癒させることは出来ないものの、その症状を軽減させたり、病気の波をコントロールしたりするのに効果があるといわれています。
自己免疫疾患は心身医学的疾患、つまり心と身体が深く結び付いているために起こる病気の典型的なものの1つです。たとえばリウマチ性関節炎は大きなストレスに曝されると増悪する傾向がありますが、それはストレスにより免疫系が過剰に活発化し、関節に対して攻撃を加えるからと考えられます。そのベースには中枢神経系と免疫系の密接な相互関係が想定されていて、むずかしくは辺縁系—視床下部−下垂体系が関与するとされます。
自己免疫疾患にメンタル面からアプローチするためには、まずはストレス状況と症状悪化の関連を自覚していただくこと、また本来免疫系は自身の身体を守る大切な役割をこなしてくれていることを、いっしょに確認する作業が大切です。また患者様1人1人でご自身の病気に与えている意味づけは異なるため、それを患者様とセラピストが共有し、患者様ごとに治療目標を設定する必要があります。その上でそのストレス状況への対処法を身につけていただいたり、健康面や肯定的な感情、「治っていける」との自信を高めたりしてゆくわけですね。そのための催眠技法はいろいろありますが、よく利用されるのがイメージで、患者様が好きな場所でリラックスし、快適に感じられている体験をしっかりと五感を通して味わってもらったり、日常の生活場面で適切に主張したり、対人関係がうまくいっているのイメージの中でシミュレーションしたり、あるいはミクロレベルで自身の免疫細胞がうまく働いている様子をイメージしたり、患者様によってはスピリチュアルなものとつながるお手伝いをすることもあります。実際にセラピストが患者様とお会いするのは患者様のご都合にあわせて1、2週間あるいは月に1回であったりしますが、患者様が自己催眠を覚えて、ご自身で毎日良いイメージ、良い体験を作れるよう練習していただくと、自信が高まることと症状が軽くなっていくことが両輪となり、病気とつき合うのが楽になってゆくと期待できます。
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