条件反射制御法学会に参加しました
2017年9月13日
2017年9月9日に千葉で行われた第6回日本条件反射制御法学術大会、ならびにその前日の研修会、千葉ダルクの見学会に参加してまいりました。条件反射制御法は、2006年に国立下総精神医療センターの平井愼二先生が薬物依存者の治療のために臨床応用を開始され、その後10年の間に草の根的な研修会を通して日本に広がりつつある治療法です。最近は芸能人やアスリートの薬物摂取事件が多く報道され、皆様も耳にされたことがあるかもしれません。現在は薬物依存のための治療だけでなく、盗癖、ギャンブル、強迫性障害の強迫行為、心的外傷後ストレス障害のフラッシュバック、衝動性や怒りのコントロールなどに対してもその有効性が報告されてきています。
この学会に参加するのは2回目ですが、いつもながら難しい状態の患者様が治療されているので驚きを覚えます。非常に長く入院している統合失調症の方の盗癖や、刑務所内での薬物依存の方の治療、薬物使用、犯歴のある方の外来レベルでの関わり、薬物依存から回復された方が今は同じ薬物依存者をサポートしているご経験、条件反射制御法を行った患者様を裁判で弁護するご経験などについての発表があり、とても感動しました。
古くはパヴロフが、人間の中枢には動物脳である第一信号系と、人間らしい理性を司る第二信号系の2つがあると述べています。平井先生が一貫して主張されているのは、慢性の薬物依存者はもうすでに自身の意志で薬物をやめるのは非常に困難であり、薬物を再摂取してしまうのは第二信号系が第一信号系に打ち勝てないためである、ということです。そのことに関しても、違法薬物の使用を中心とした再犯者についての法的責任についてのシンポジウムがありました。シンポジストは現役の検察官、弁護士、そして退職された裁判官の先生たちで、平井先生が座長を務められました。治療する立場から「病気のために意志の力では薬物依存をやめられないのだから、治療がしっかりとなされるべきであり、意志によって薬物をやめられないことを現在の法で裁くのは妥当ではなく、まず患者の責任能力をしっかり評価してから裁かれるべきである」と考えることは、十分に納得がいきます。ただ一方で検察官の側からは、「だからといって薬物使用者に一般市民が傷つけられるわけにはいかず、市民を守るためにまず薬物依存者を刑務所に隔離すべきである」という意見もあり、それももちろん正当性のある視点です。正直なところ、私にはこの問題に正しい答えを見いだせていません。いずれにしろ、医療の立場と法の立場が今後さらなる連携の形を模索していかなければならないことは明らかであり、私自身としてもこの問題を宿題として暖めておきたいと思います。
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