条件反射制御法の研修に参加しました
2017年6月6日
6月3日(土)に函館で開かれた条件反射制御法の研修に参加してまいりました。条件反射制御法は2006年に国立下総精神医療センターの平井愼二先生によって覚醒剤依存の患者様に対して初めて臨床応用された治療法で、近年芸能人やスポーツ選手の薬物依存について頻繁に報道されていることもあり、とみに注目されてきています。その基礎にあるのはパヴロフの条件反射理論ですが、「梅干しを食べて唾液が出ることが繰り返されると、梅干しを見ただけで唾液が出てくる」という話は有名ですよね。「梅干しを見ただけで唾液が出てくる」というのは、梅干しを視覚的に知覚することが唾液分泌を促すということですが(実は嗅覚も関係していると思われます)、もともと関係なかった「梅干しをみること」と「唾液が出ること」が条件付けられた、ということになります。薬物依存の状態も同じで、いったん薬物を摂取することを中断できても、薬物を使った場所に行ったり、薬物を摂取する際に使った道具を見たり、薬物の売人に会ったりすると、それが条件刺激になって薬物に対する欲求が高まり、摂取してしまうと考えられます。多くの場合、薬物摂取の条件刺激は日常生活の中にあふれています。「目には目を」という言葉通り、条件付けの病気に対しては条件付けを利用した治療が効く、というのが条件反射制御法の土台にある考え方です。条件刺激によって薬物摂取の欲求が出てきたら、普段から練習しておいたキーワード・アクションという治療的条件付けによって摂取欲求を止めるのが有効で、これが治療の第一段階です。その後の治療ステージでは、一度形成された問題のある条件付けを弱めていくブロセスが加わります。「梅干しを見ただけで唾液が出る」との条件付けが出来上がった後も、「梅干しを見ただけでその後梅干しを食べないようにする」という空振り体験を繰り返す中で、梅干しを見ただけでは唾液は出ない元の状態に戻っていきます。ですからたとえば覚醒剤依存の場合、覚醒剤が入ったようにみえるニセの注射器を静脈に押し付けるような動作を繰り返していると、次第に覚醒剤に対する体の反応が消えていきます。さらなる段階では、過去に覚醒剤を使用した状況を詳細に思い出し、想像することで空振り体験としていきます。
条件反射制御法は、現在では薬物依存の他にギャンブル、心的外傷後ストレス障害のフラッシュバック、パニック障害、強迫性障害、性依存症、盗癖、衝動性や怒りのコントロールなどにも有効との報告が積み上げられつつあります。
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