日本精神神経学会の第115回大会に参加しました
2019年6月24日
令和元年6月20日(木)、21日(金)には、新潟で開催された日本精神神経学会の第115回大会に参加してまいりました。日本精神神経学会は、精神療法や精神病理学のような全人的な医療を課題としている領域から、地域医療や福祉にまたがるような領域、生物学的精神医学のような最先端の技術で精神疾患の病態解明に努めたり、薬物療法について研究する領域など、非常に幅広い話題を網羅した、精神科関連では日本最大の学会です。その大会では多種多様の話題に関連するシンポジウムや口頭発表が用意されていましたが、その内で興味をそそられたもののいくつかについて、簡単にご紹介しましょう。
近年は、乳児と母親との関係がその後の児のメンタルヘルスに大きな影響を及ぼす、と繰り返し指摘されてきていますが、乳児—母親関係についてのシンポジウムも組まれていました。精神分析の立場からは、授乳という行為が乳児と母との関係の中核をなし、それが快いものとなるか否かがその後の乳児の心身の成長に長期間にわたって影響を及ぼし続ける、という話があり、具体的な事例として、母乳が十分に出ない母親が母乳を与えることに強くこだわることがかえって母子ともにストレスを強め、児の成長によからぬ影響を与えるとの話もありました。生物学的視点からは、虐待は人間だけでなく他の野生動物にも比較的広く見られる現象であり、子育て行動には間脳の内側視索前野中央部、子供を攻撃する行動には分界条床核菱形部という脳部位がそれぞれ関与しているとの話も、非常に興味深いものでした。どのような理由があっても虐待は許されぬ行為ですが、今後は今以上に虐待の加害者も医療の対象になる可能性が大きくなってくる、ということもありそうな気がいたします。
生物学的精神医学の領域では、精神疾患と遺伝の関連についての話がありました。たとえば、統合失調症の発症と強く関連する遺伝子の異常(正確には、遺伝子群の欠損)が何種類か知られており、統合失調症に遺伝の影響があることは間違いありません。ただ一方で、そうした同じ遺伝子の異常は統合失調症に特異的なものではなく、躁うつ病、自閉症スペクトラム障害(発達障害の一種)、知的障害などにも認めうるものでもあり、遺伝子の異常がどのような精神症状と関連しているのかは定かではありません。ただ遺伝子の異常の解明は、将来的に精神疾患を克服するための薬の発明を期待させるものでもあります。
統合失調症に対する薬は最近数十年余りの歴史の中で数多く生み出されてきましたが、それでも薬が十分に効果を発揮しない場合があり、現在最後の砦ともいえる薬としてクロザピン(商品名はクロザリル)があります。ただ本邦ではかつて副作用の顆粒球減少症(好中球という白血球の一種が減少する)のために死亡例が出たため、しばらくの年月その使用が禁じられてきました。しかしその治療効果から、現在は副作用に十分に注意を払いながら、特定の医療機関においては使用が可能となっています。ただ、好中球の減少が致死的なものか判断するためにはただ好中球の数を計ればいいというわけではなく、致死的にならない白血球減少と致死的になるそれとを厳密に区別することが要請されます。必要以上にリスクを恐れてクロザピンの投与をためらわずに済むよう、患者様側の要因である組織適合抗原という遺伝情報を調べてハイリスクの方を同定し、それ以外の方には服薬していただけるのではないかと述べた研究発表がありましたが、これは患者様に対して非常に大きな貢献になるのではないかと感じました。
また自ら開業している事情もあり、女性の先生方が個人医院を開業された理由などについて話されたシンポジウムというのも非常に興味深く聴かせていただきました。自身は男なので自覚がありませんでしたが、女性が医療組織で勤務されることの大変さを今更ながら教えていただいたようにも思います。女性ならではのご苦労は現代の社会で問題になっているものとそう変わりはなく、子育てと仕事を両立させることの難しさからパワハラ、セクハラのような問題にもわたりますが、シンポジストの先生方の、それぞれにご自身の理想とされる医療を懸命に実現されようとするお姿には感銘を受けました。それでも最初イメージしていた医療と実際の業務はピッタリ重ならなかったりもするわけですが、その場その場で提供可能な最善の医療を模索する御様子をうかがい、強く励まされたように感じています。
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