新田次郎の『孤高の人』
2017年8月2日
この小説は、新田次郎の山岳小説の中でも際立った名作と思います。主人公の加藤文太郎は実在の人物がモデルとなっており、神戸の造船所に勤務すると同時に、有名な登山家でもあります。ほとんどの登山家が仲間とパーティを組んで山頂を目指すのに対して、文太郎は単独行つまり一人で登山するところがきわめて変わっています。文太郎は精神力や登山に必要とされる直感的な判断、体力に恵まれ、当初は単独行そのものを楽しみ、そこに登山の意義を見出していました。その後登山の経験を重ねながら次第に仲間との交流も欲するようになるのですが、残念ながら対人関係が苦手で、自身の気持ちを言葉や態度でうまく表現できないために、山で出会う他の登山者たちの誤解を受けて苦しみます。新田次郎の描いた加藤文太郎は、社会適応は比較的良いものの、登山の単独行を選択して長く変えなかったこと、対人関係の苦手さ、仕事などを二の次にして登山という一番の目標に熱中する傾向もあり、軽度の発達障害もしくは軽度の統合失調パーソナリティではないかと想像されます。
文太郎にとって何より幸運だったのは、一貫して文太郎の心の支えとなってくれた上司や生涯の伴侶に恵まれたことで、それ以外にも山小屋の番人、友人などとの関わりを通して、時々に社会のルールを学んだり、気持ちを共にできたこともプラスになったはずです。もちろんそのように接してくれる他者がいたというのは、文太郎の人柄や才能など持ち前のものによるところも大きかったでしょう。ただ皮肉にも、そのようにして文太郎が周囲に心を開いていき、結婚したこともあって「これを最後に登山はやめよう」と決意して臨んだ最後の山で命を落とすことになります。文太郎にとって最後の登山は、文太郎を慕う後輩の登山家に請われて心ならずも2人で挑んだものでしたが、それまでの単独行のスタイルを崩したことが文太郎の命を奪ったのです。
このように、苦労し、勇気を持って新たな人間関係を求めたことが文太郎の死につながったのは悲劇と言わざるを得ません。しかし『孤高の人』は、自然というものが人を自身と対峙させ、自らを成長させる機会を与えてくれ、そして何より、本当に愛し、信頼できる人との出会いが非常にかたくなな心をも開かせる力がある、と教えてくれているように思われます。
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