慢性疼痛に対する催眠療法
2017年11月8日
慢性疼痛は、長時間痛みが持続して再発を繰り返し、障害の程度と痛みの強さには明らかな関連が見られず、障害を受けた場所と違う場所に痛みを感じたりもするもので、「傷を負っている」との警告の意味も失われています。末梢や中枢における諸々の痛覚過敏のメカニズムが絡み合っていて、患者様の訴えは非常に複雑なものになっていることがしばしばです。慢性疼痛には、慢性関節リウマチや悪性腫瘍による侵害受容体性疼痛、過敏性腸症候群や頭痛などの機能性疼痛、帯状疱疹後神経痛や脊髄損傷、視床痛のような神経因性疼痛、二次性の疾病利得や痛みを和らげようとする努力が痛みを持続させている学習性疼痛、うつ病、転換性障害など精神疾患の症状として現れる疼痛、などがあります。
慢性疼痛の病態が複雑なのは、実際に損傷を受けたために痛むというだけでなく、痛みから生活に出ている現実的な障害、治らないのではないか?との絶望的な思考、「誰もこの痛みを分かってくれない」との辛さ、「痛みは自身に対する罰である」というような痛みに対する意味付けなどが複雑に絡み合っているためです。個々人の患者様にとってその痛みの辛さは独特のものになっているので、治療者は患者様ごとにその痛みの性格を理解し、患者様とそれを共有することから始める必要があります。痛みは単に痛覚という感覚だけの問題ではなく、痛みの意味、痛みに対する感情や思考、生活の障害や対人関係状の問題など複数の要因が存在していますが、そうした要因に関連する大脳皮質の領域はそれぞれに異なっています。催眠療法のすばらしいところは、それぞれの大脳皮質に対して暗示という形でメッセージを送ることができることで、いろいろな慢性疼痛に対して医学的なエビデンスが確立されてきてもいます。痛みには歴史もあり、10の痛みを0にすることは難しいのですが、7にするくらいは可能であることが少なくありません。慢性疼痛をよくしていくためには患者様にいろいろな養生をお願いする必要もあり、治療者としてはまず患者様との信頼関係を作っていくことが治療の第一歩となります。
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