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山本幸司さんの『頼朝の精神史』~源頼朝という生き方

山本幸司さんの『頼朝の精神史』~源頼朝という生き方

2019年5月22日

現代においても、歴史番組、クイズ番組など見ていますと源頼朝は非常に人気のある歴史上の人物であるとわかります。確かに、日本で初めて武家政権の基礎を作った人で、傑出した人であったことは間違いないと思われます。ただもう800年以上も昔の人で資料が限られており、歴史的な事実はある程度残るにしてもその心の内まで記したものはなかなかないので、実際に頼朝がどんな人だったのか?を知るのは非常に難しいことです。ただこの本の著者である山本さんは歴史の中でも中世の思想史がご専門で、頼朝の歴史的功績ではなくその人柄について触れている点で非常に興味深く読める本になっています。

 

山本さんが指摘されて面白い点は多々ありますが、まずは頼朝が政治的に非常に冷静、冷徹に判断を下している面と、情に厚い面がある、ということでしょうか。よく知られているように、頼朝は弟である義経や範頼を追い詰め、結局自害、殺害に至らせています。食うか食われるかの時代で、実際に父の義朝は平治の乱で平清盛に破れ、殺されていますし、自身も囚われの身となったものの、池禅尼の助命嘆願により伊豆に流されることで命をつないでいます。その後反平氏勢力が決起するにあたって頼朝も伊豆で兵を挙げるものの、石橋山の戦いに破れ、ここでも命からがら逃げ延びています。こうした経験が頼朝を非常な現実家とし、義経に現れるような命を恐れぬ武勇を高く評価していませんでしたし、血族を含めて自身の対抗勢力になりうる相手は特に、梶原景時のような腹心や雑色といわれる役目の人々をおいて監視させてもいます。一方で、自身に助力した相手にはそれなりに恩賞を与えることも忘れていませんでしたが、それはあくまで自身の対抗馬とはなりえないような力のない相手に対してだけであって、力を持った相手には力関係を明らかにし、服従を強いるようなことをして試したり、攻撃の機会にしたりもしています。

 

頼朝は信仰心に厚いとも言われますが、これは時の権力者が抵抗勢力を排除する中で、怨霊を鎮めるという意味合いが強かったとも考えられます。菅原道真のたたりの話は有名ですが、頼朝の時代もまだまだ怨霊が真剣に恐れられていた時代で、多くの犠牲の上に鎌倉幕府を開いたことを考慮すれば、無理もありません。実は、鶴岡八幡宮も霊を鎮めるために建立された意味合いが強いようです。

 

この本の大雑把な主旨は、上のようなところと思います。ただ私の勝手な推測では、頼朝ほど人を信頼できない人間はいなかったのではないか?と思われるのです。その理由の1つは、平治の乱に敗戦後囚われの身になり、石橋山の戦いでも九死に一生を得ており、現代のことはで言えばこれは「トラウマ」と呼ばれるものに相当するに十分なインパクトを持った経験だったはずです。トラウマを経験すると、その後サバイバルの必要性からトラウマの兆候に対して非常に敏感になりますが、それは人間関係の中でも現れ、猜疑的になりがちだったのではないかと想像されます。そしてそれに劣らず大きな理由は、頼朝が一度は助命嘆願の末に命を許されたものの、その後反旗を翻して平氏を滅亡させていることです。頼朝が平家に対して命乞いをしたことにはその当時から賛否両論ありますが、その後の功績を鑑みれば、それだけの覚悟をもって命をつないだのか、と肯定的な感情も持たないわけではありません。ただ、自身が敵方の恩情をもって命をつないだのに将来逆に平家を滅ぼしてしまったことは、「人に恩情を与えてはいけない」「いつか裏切られるかもしれない」との思いを非常に強く抱かせる契機になったのではないかと想像されます。そして、そのことが結局は一族や家臣の間でも信頼関係を確かにしていく方向には向かわせず、将軍3代で終わらせるという宿命につながったのではないかと思ったりもいたします。


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