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小島慶子さんの『解縛―母の苦しみ, 女の痛み』  〜 摂食障害の苦悩

小島慶子さんの『解縛―母の苦しみ, 女の痛み』  〜 摂食障害の苦悩

2019年2月18日

元NHKのアナウンサーであった小島慶子さんの自伝で、15年間摂食障害を患った苦悩を中心に描かれています。以前にはテレビでよくお顔を拝見した小島さんであっただけに、読んでみて非常に驚きました。小島さんは不安障害にも見舞われ、別なところでは発達障害と診断されたとも記していらっしゃいますが、摂食障害の方に比較的典型的な苦悩が非常に赤裸々に表現されているように思われます。

 

記されている一番大きなテーマは、お母様やお姉様との葛藤です。読んでいてまず知られる不幸は、お母様が愛情からではなく体面や経済的事情からお父様と結婚されたらしく、お父様との関係も良好でなかったこと、そしてお母様自身も伯母様から虐待されていたらしいこと、そしておそらくはそうした影響で、お母様は小島さんの気持ちを考えることなく自身の思うように強制していたように小島さんに感じられたこと、でしょう。またお姉様は9歳年上で、普通はこれだけ年齢差があると姉妹葛藤もあまり起こらないものですが、小島さんのご家庭には特殊な事情もあるようです。このように「初めて知る社会」である家庭が子供にとって危険で安全感に乏しく、信頼を育めない状況である場合には、自身が本当にはどのように感じたり、何を欲しているのかなどを棚上げにして、どのように振る舞えば安全に生きられるかを優先にしてしまいがちです。そのことはその後外の社会に出て新たな人間関係を構築していく際に大きなハンディとなりますが、幼少期からお父様の海外を含めた頻繁な転勤のためにじっくりと友情を育てていくのが難しく、自身が傷つけられずに安全に生きることを最優先に考えねばならないように小島さんを追い込んでしまったと推測されます。小学校1年にシンガポールで出会ったお手伝いの女性を「私が最初に出会った優しい女の人」と表現しておられるのを読むと、全ての読者が言葉を失うのではないでしょうか。小島さんはなんとかそこから脱却しようと苦闘されますが、小、中、高校、大学生活、さらには職場も小島さんにとって安心して自身を表現し、周囲と交流できる場ではありえませんでした。

 

最後の章では幸せな結婚をされ、2人のお子様に恵まれたと知られます。お母様に苦しめられた体験故に、ご自身は「子供は自分とは別な人格を持った存在」であることを非常に強く意識して、誠実な母親であろうと努められている様子がひしひしと伝わってきますが、ご自身が実際に母親になって子育てを行うプロセスの中で、お母様に対する怒りが噴出するに至ります。子供時代に理想の母親像を体験できなかった場合に、実際に自身が母親となるに際してよい母親のイメージを作れずに苦悩するという話はまれならずうかがうことがあり、察するに余りあるものと感じられます。旦那様が小島さんにとても理解があり、寄り添ってくれる方であったこと、(とまどいもあったでしょうが)2人のお子様に恵まれたこと、そして素晴らしいセラピストに出会えたことは何よりの幸いであったと想像されます。

 

今回小島さんのご自伝を拝読して、改めていろいろなことに気づかせていただけたと感じています。その内で最も大きなことの1つは、人の生き方には様々な紆余曲折があり、人には幸福な出会いを通して本来の自分を取り戻す力がある、ということでしょうか。

 

 

 


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