天才催眠療法家ミルトン・エリクソンってどんな人?
2017年6月26日
催眠はエジプトやメソポタミアの古代文明の時代から存在し、治療だけでなく宗教的にも用いられていたと推測されています。しかしその歴史の古さや治療的効果への期待の大きさに比較して科学的に十分に解明されておらず、また世間に広がっている催眠についてのイメージの多くが誤解であったりもします。よくある誤解の一つは、「催眠療法は、治療者が権威的に患者、クライエントに対して暗示を与えることで治療効果が得られる」というものですが、現代においては、催眠療法の効果は治療者の権威的なパワーから出てくるのではなく、治療的な信頼関係を前提として患者、クライエント側の要因がうまく活かされることにより生まれると考えられています。実はこれまで誤解されてきたのは催眠療法家の側にも責任があり、催眠療法では治療者と患者、クライエントとの協働的な関係が重要であると認識されるようになったのは、天才催眠療法家ミルトン・エリクソンの貢献によるところが大きく、まだそう遠くない20世紀の話です。
ミルトン・エリクソン(1901-1980)は米国生まれの精神科医で、農家の子として米国に生まれ、多くの兄弟とともに育ちました。エリクソンは独創的に催眠の特性や技法を発見、発明し、催眠というものの概念まで変えてしまうのですが、そのプロセスは自身の体験によっています。全色盲、失音楽症、失読症、ポリオによる神経麻痺など多くの障害を抱えつつ、エリクソンは持ち前の性格でそれらをむしろ自身や人間、催眠などについての新たな発見の機会に利用していました。たとえば、子供の頃のエリクソンには辞書に載っている言葉がアルファベット順に並んでいることがわからなかったために、知らない言葉に出会うたびに、意味を知りたい言葉にたどりつくまで最初から辞書を読んでいたため、友達からは「ミスター辞書」と呼ばれていました。その経験から得られた豊富な語彙力は、催眠を行う際に力を発揮しました。またポリオを患ったことで、麻痺している身体をどのようにしたら動かせるか、痛みをどうしたらコントロールできるか、などを自分の身体で試行錯誤しながら発見していきました。エリクソンはいろいろな逸話を話すことでも有名ですが、そうした逸話にはエリクソン自身の体験に根ざしたものが多くあります。
とても独創的で魅力的な催眠療法家であるミルトン・エリクソンの叡智について、これから少しずつご紹介していこうかと思います。
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