催眠の合同学会に参加しました 〜 慢性疼痛について考える
2017年11月17日
2017年11月3日から11月5日にかけて、鹿児島で開催された日本催眠医学心理学会、日本臨床催眠学会の合同学会に参加してまいりました。
今回の大きなテーマは「疼痛に対する催眠療法」でしたが、米国から招かれたマーク・ジェンセン先生の慢性疼痛に対する催眠療法の研修ならびに特別講演は大会の目玉で、豊富な臨床経験と十分な見識の両方を備えた先生ならではのものでした。さまざまな慢性疼痛に対する催眠の使い方と、その効果のエビデンス、さらには催眠療法の効果を生み出す暗示の工夫とその基礎にある生物学的な裏付け、さらには先生が臨床の中で患者を気遣われる姿勢など、全てに感動した次第です。
松木繁先生の大会長講演は、先生のライフワークである患者と治療者の共感的な関係性に基づく守られた空間としての催眠トランス空間についてのお話で、今ではもう多くの催眠療法家にその理論が広く知られるようになったものの、この理論の発表当時はまだ治療者が権威的にふるまうのが当然と考えられていました。患者の催眠下での反応をしっかりと観察し、それをしっかり受けとめて治療者も反応し、言語的あるいは非言語的に応答することでクライエントは「受けとめられた」と感じることが出来、たとえば解離性同一性障害(多重人格性障害)のような難しい方の治療も可能になってきたと知られます。
2つのシンポジウムのうち、1つは痛みをもつ事例の発表を下にベテランの治療者が意見を述べ合う形で進められました。治療の中では患者の独特な言葉の表現、その患者にとって痛みが持つ意味性への配慮、それらを治療的にうまく扱うためにどのような工夫を施したら良いのか、さらには催眠を利用する際の治療者の姿勢など、多くを学ぶことが出来ました。2つ目のシンポジウムも痛みに関するものでしたが、座長およびシンポジストが慢性疼痛に対する催眠の利用可能性、マインドフルネス、過敏性腸症候群に対する催眠療法、という各視点から話をされ、それぞれに新鮮な刺激を与えてくれました。
一般演題は催眠の実験的研究、産婦人科での催眠利用、その他事例報告があり、若い先生方のご発表も多く、自身が催眠の勉強を始めた頃とは隔絶の感を覚えるユニークさでした。
いろいろな立場で催眠を利用しながら日々の臨床、研究に熱心に関わっておられる先生方のご活躍の報告を聞いていると、催眠療法をやっている仲間として非常に力強い限りであり、自身も「患者様に対してもっとお役に立てる工夫がないものか?」と今さらながらに考え直したりしています。
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