国分寺 精神科 心療内科 大学通り武蔵野催眠クリニック メンタルクリニック

「千と千尋の神隠し」は興味深いですね

「千と千尋の神隠し」は興味深いですね

2017年5月26日

先日の大学での講義では、宮﨑駿監督の「千と千尋の神隠し」について少しだけ話しました。

実は、この作品は現代の世相を非常にうまく表現しているんですね。千尋のご両親はあまり千尋の気持ちを汲むのが得意ではなく、湯婆婆の営む湯屋のある世界に入り込んでしまいますが、その後千尋は湯婆婆に名前を奪われ、湯屋で働かされ、次々と予想も理解もできない状況の中に放り込まれ、豚に変えられて食べられてしまうかもしれない両親のこともあり、恐怖と不安でいっぱいのはずです。ただ千尋は幸いにも、ハクや釜爺、リンをはじめ個性的な脇役に助けられながら、これらの苦境を乗り越えていきます。最後には湯婆婆との賭けに勝って、豚に変えられていた両親も人間に戻ることができ、元いた世界にまた立つことができます。千尋は心的外傷を体験したといえますが、自身の健気さや多くの人の援助に加え、ハクが名前を思い出したり、カオナシや坊が救われることに貢献するプロセスが自身の外傷体験を乗り越えるためにプラスに働いていると思われます。この物語の中では、外傷体験にしっかりと対峙して乗り越えていくという理想的な克服の形が描かれていると言えましょう。元の世界に戻ってもご両親は以前のままで千尋の苦労を理解する様子はなさそうですが、トンネルをくぐってから来た方向を振り返る時、千尋の表情は確かにすばらしいものを手にしたと語っています。自分を助けてくれた人々や自身の体験を、生涯の財産として自身の中で暖め続けていくことになるのではないでしょうか。

湯婆婆は悪党とも言えるのですが、坊に振り回されるような可愛い面も持ってますね。湯婆婆の姉を湯婆婆とうり二つに描き、同じ水色の服を着せているのは、宮崎監督が1人の人にはいろいろな面があり、根っからの悪人ではない、と言いたかったのかもしれません。あるいは、こんなふうに争っていても姉妹はやっぱり姉妹だ、と言いたかったのかもしれませんね。

カオナシは最後に湯婆婆とそっくりの姉の編み物の手伝いを頼まれることになりますが、きっとこんな体験は初めてだったんじゃないでしょうか。名前を奪うことはその人のアイデンティティを奪うこと、つまりひどい虐待に当たりますが、顔がないことは自身のアイデンティティを持ち合わせないこと、そして食べたカエルを通してしかしゃべれないことは、自身がどうしたいという気持ちを自身で十分に知り得ないことの表現でしょう。湯婆婆の姉と毛糸を通してしっかりと結ばれ、相手のために自分が役に立っているという感覚を味わえているカオナシ、とっても幸せだろうと思いますよ。


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