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日本精神神経学会第117回大会に参加しました(2)ー周産期の精神医学のシンポジウム

日本精神神経学会第117回大会に参加しました(2)ー周産期の精神医学のシンポジウム

2021年10月17日

今回は、令和3年9月19日―21日に開催された日本精神神経学の会第117回大会についてのご報告の第2弾で、「周産期メンタルヘルスに関する諸問題」というシンポジウムの要約をお伝えいたします。

 

女性が妊娠、出産し、その後新生児を育てていくプロセスの中で精神的な変調をきたす、ということは珍しくありません。母体はホルモンバランスや脳内変化のような大きな生理的変化を受ける状態になりますが、さらに妊娠、出産、子育て、そして「親になるということ」、という喜ばしくも困難を伴う状況への不安などもありましょう。ところが残念ながら、産婦人科と精神科との連携は不十分、というのが現況なのです。私のような精神科医からしますと、身体のこと、とくに産婦人科領域というのはなじみがないというところがありますし、産婦人科のお医者様からすると、精神科の患者様はどんな反応をするかわからないから不安だ、ということもありましょう。互いの専門領域のことがわからない同士ですが、こちらからすると、産婦人科の先生もそんなに怖がらなくてもいいのになあ、と思ったりすることもあります。

 

私自身も時には妊娠、出産にあたっての相談を受けることがあり、そのたびにそれまでの知識を更新すべく勉強しなおすのですが、妊婦さんや授乳されるお母さんに対して「薬をどう使ったらいいのか?」というのは、これまでずっと悩ましい問題と感じてきました。ただ喜ばしいことに、妊娠、授乳されなければいけないからといって服薬中止をしにくい抗精神病薬、抗うつ薬などの多くは、中止して精神的に不安定になるよりも服用を続けて精神状態が安定していた方がメリットが大きい、という概ねの結論が得られるようになってきました。先のような向精神薬は必ずしも催奇形性を高めるわけではなく、授乳によって赤ちゃんへ移行してもそう大きな問題にならないことが多い、ということもわかってきました。ただ特に、抗てんかん薬、情動調整薬などは服薬中止が望ましいものが少なくなく、注意は必要ですが。

 

妊産婦さんは不安が多いので、精神的な支えはとても大切、との話もありました。特に出産後に起こしやすい産後うつ病という病態は以前から知られていて、以前から訪問カウンセリング、認知行動療法、対人関係療法、電話によるピアサポートなどが行われてきました。ただ、それはこれらのある意味特殊な関わりだけが有効だというわけではなくて、感情が高ぶったり、抑うつ的になったり、不安になったりするという妊産婦さんの自然な状態に対して、一般の精神科医が行い得る多くのことがあります。薬もですが、人を支える試みというのは精神科医が当たり前にやってきていることですし、さらに前述のような産婦人科の先生方との連携は妊産婦さんの安心につながります。

 

コロナ禍での産科医の御奮闘のお話もありました。コロナに感染された妊婦さんへの対応としては、コロナ感染症の症状の重症度や妊娠週数によってさまざまな対応がなされているようです。千葉においてコロナに感染された妊婦さんが入院できぬままに亡くなられた事件は医療現場にとっても大きなトラウマになっており、その後必要な医療システムの構築が模索されている現状です。


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